97. 灼

英題:The Unidentified

作曲:thus(2022)
編曲:thus(2022)
Music by thus © 2022 thus

歌詞:thus(2022)
Lyrics by thus © 2022 thus

絵:茶仔(2022)
Art by 茶仔 © 2022 茶仔

動画:thus(2022)
―フォント:あんずもじ2020

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【 灼 ( あらたか ) 】

花火 ( はなび ) は 鳴 ( な ) り 終 ( お ) わり 寂寥 ( せきりょう ) と 硝煙 ( しょうえん ) の 匂 ( にお ) い
夏夜 ( なつよ ) の 闇 ( やみ ) へ 過 ( す ) ぎて 熄 ( き ) える 頃 ( ころ )
人気 ( ひとけ ) のない 畦道 ( あぜみち ) の 通 ( とお ) りで
来 ( こ ) いよ 来 ( こ ) いよと 招 ( まね ) いている 影 ( かげ ) が

何 ( なに ) かと 思 ( おも ) って 近 ( ちか ) づいてみるけど
どうしたことか 距離 ( きょり ) が 縮 ( ちぢ ) まらない
あんまり 暗 ( くら ) くて 顔 ( かお ) も 良 ( よ ) く 見 ( み ) えない
おいでおいでと 招 ( まね ) いている 影 ( かげ ) が

私 ( わたし ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 帰 ( かえ ) れないと
大奥 ( おおおく ) に 佇 ( たたず ) み こちらを 見 ( み ) ているのか
吹 ( ふ ) く 夜風 ( よかぜ ) が 余熱 ( ほとぼり ) を 撫 ( な ) でるように
僕 ( ぼく ) に 何 ( なに ) かを 求 ( もと ) めているのか

私 ( わたし ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 帰 ( かえ ) れないと
ただ 上 ( うえ ) を 見上 ( みあ ) げて 憂 ( う ) いているようだった
天 ( あま ) の 川 ( がわ ) を 背 ( せ ) に 湛 ( たた ) えた 光 ( ひか ) る 山 ( やま ) で
僕 ( ぼく ) に 何 ( なに ) をか 求 ( もと ) めているのか

分 ( わ ) からないけれど 困 ( こま ) っていそうだから
僕 ( ぼく ) は 山 ( やま ) を 一緒 ( いっしょ ) に 登 ( のぼ ) っていた
今日 ( きょう ) も 熱帯夜 ( ねったいや )   日付 ( ひづけ ) が 変 ( か ) わる 頃 ( ころ )
提灯 ( ちょうちん ) を 片手 ( かたて ) に 深夜 ( しんや ) の 肝試 ( きもだめ ) し

そう 言 ( い ) えば この 山 ( やま ) は 初 ( はじ ) めて 登 ( のぼ ) ったかな
いや 盆頃 ( ぼんごろ ) 先祖供養 ( せんぞくよう ) で 登 ( のぼ ) ったかな
どうも 道中 ( どうちゅう ) で 鼻 ( はな ) 突 ( つ ) く 屋台 ( やたい ) の 香 ( かお ) りが
後 ( あと ) の 祭 ( まつ ) りの 余興 ( よきょう ) と 並 ( なら ) んでいる

燐 ( りん ) の 人魂 ( ひとだま ) が 飛 ( と ) んでいる
布地 ( ぬのじ ) のお 化 ( ば ) けも 交 ( か ) っている
樹木 ( じゅもく ) が 唆 ( そそのか ) す 籤引 ( くじび ) き 御布施 ( おふせ ) のインチキ 商売屋 ( しょうばいや )

私 ( わたし ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 帰 ( かえ ) りたいと
頂 ( いただき ) に 佇 ( たたず ) み 空 ( そら ) を 見上 ( みあ ) げていた
吹 ( ふ ) く 夜風 ( よかぜ ) の 冷 ( つめ ) たさと 同 ( おな ) じような
その 素振 ( そぶ ) りは 寂 ( さび ) しそうだった

私 ( わたし ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 帰 ( かえ ) りたいと
あの 星 ( ほし ) を 指差 ( ゆびさ ) し 言 ( い ) っているようだった
天 ( あま ) の 川 ( がわ ) の 繁星 ( はんせい ) が 集 ( すだ ) く 逆光 ( ぎゃっこう ) に 翳 ( かげ ) る
その 姿 ( すがた ) は 綺麗 ( きれい ) で 儚 ( はかな ) かった

暫 ( しばら ) くは 静 ( しず ) かに 何 ( なん ) にもない 時 ( とき ) で
夜空 ( よぞら ) の 星 ( ほし ) を 手持無沙汰 ( てもちぶさた ) に 眺 ( なが ) めた
夏 ( なつ ) の 大三角 ( だいさんかく ) を 何 ( なん ) となく 探 ( さが ) したら
青 ( あお ) い 地球 ( ちきゅう ) が 浮 ( う ) いていたんだ

見 ( み ) てはいけないものを 見 ( み ) てしまったような 気分 ( きぶん )
そんな 僕 ( ぼく ) を 心配 ( しんぱい ) そうに 覗 ( のぞ ) き 込 ( こ ) む
月明 ( つきあ ) かりと 星 ( ほし ) の 輝 ( かがや ) きに 照 ( て ) る
見 ( み ) たその 顔 ( かお ) は 僕 ( ぼく ) の 顔 ( かお ) だった

君 ( きみ ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 灼 ( あらたか ) の 仔 ( こ ) よ
貴方 ( あなた ) の 還 ( かえ ) るべき 星 ( ほし ) はあそこにある
遠 ( とお ) い 向 ( む ) こう 側 ( がわ ) で 鈴々 ( りんりん ) と 聞 ( き ) こえる 囃子 ( はやし ) を
耳 ( みみ ) にしながら じっと 見 ( み ) つめていた

君 ( きみ ) は 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 灼 ( あらたか ) の 仔 ( こ ) よ
貴方 ( あなた ) の 故郷 ( ふるさと ) は まだここではないと
吹 ( ふ ) く 夜風 ( よかぜ ) に 星 ( ほし ) へ 向 ( む ) けて 舞 ( ま ) い 上 ( あ ) がれ
僕 ( ぼく ) の 身体 ( からだ ) が ふわりと 浮 ( う ) いていく

私 ( わたし ) の 星 ( ほし ) の 仔 ( こ ) よ 灼 ( あらたか ) の 仔 ( こ ) よ
その 身 ( み ) を 輝 ( かがや ) かせ さあ 還 ( かえ ) りなさいと
遠 ( とお ) く 離 ( はな ) れていく 花火 ( はなび ) も 屋台 ( やたい ) も 小 ( ちい ) さくなって
星 ( ほし ) の 彼方 ( かなた ) へ 消 ( き ) えてしまった もう
夏 ( なつ ) の 終 ( お ) わりと 共 ( とも ) に 熄 ( き ) えた