125. 煢

英題:Lonesome

作曲: thus(2021-2023)
編曲: thus(2023)
歌詞: thus(2023)
Song by thus © 2023 thus


( ひとりもの )

白紙 ( はくし ) ( うえ ) ( うす ) 罫線 ( けいせん ) 無為 ( むい ) ( ) つめる 鍵盤 ( けんばん ) ( まえ )
( もく ) ( はた ) から ( すわ ) っていた ( まる ) 囲炉裏 ( いろり ) ( はな ) ( なかま ) ( なが ) めて
( ぼく ) はそっと 裏口 ( うらぐち ) ( ) 気懸 ( きが ) かり ( ) れる ( ) にも ( ) づかず
そうしてそのまま ( たが ) うことはなく

何処 ( どこ ) ( ) てもそうだった まるで 前世 ( ぜんせ ) ( ごう ) 背負 ( せお ) ったように
( みんな ) ( なに ) かを ( ) っていた  ( ぼく ) ( ) てない ( なに ) かを ( いとぐち ) として
( ) からぬ ( ぼく ) 机上 ( きじょう ) ( ) ( ) とす  ( ちい ) さな ( いえ ) ( たたず ) む ぽつり
門越 ( もんご ) ( おな ) 団欒 ( だんらん ) 其処 ( そこ ) ( ころ ) がる 日々 ( ひび ) ( うつく ) しく ( おも ) って

( いま ) ( ぼく ) 此処 ( ここ ) ( ) てているその ( わけ )
( たし ) かなものが ( ) ( なか ) ( ) てていれるのは 何故 ( なぜ )
( がい ) して ( ひとりもの ) だった  幾何異性 ( きかいせい ) ( ) ないように ( ) かされ
( がい ) して ( もと ) めていたんだ  異星感 ( いせいかん ) なイリヤの ( たび ) をした

―*―

  ( たし ) か、 自分 ( じぶん ) ( せき ) ( すわ ) るようにと、 ( みんな ) ( せき ) ( ) いたんだった。
  ( わたし ) ( すわ ) った 椅子 ( いす ) だけ ( こわ ) れ、 ( あず ) けた 体重 ( たいじゅう ) 背中 ( せなか ) から ( ) ちた。
  ( いま ) もずっと ( ) ( つづ ) けている。

*―*

ドールハウス 一軒家 ( いっけんや ) にお 邪魔 ( じゃま ) した 朝朗 ( あさぼら )
( とも ) ( ) ぎる ( とき ) ( つな ) ( のこ ) された ( ひと ) 気配 ( けはい )
( やぶ ) られた 約束 ( やくそく ) ( いま ) ( しん ) ( ) たそうとしてて
( こころ ) ( とど ) まった ( まま ) ( ぼく ) ( ) ( こえ ) ( ) ( )

舞踏会 ( ぶとうかい ) ( はじ ) まって ( ぼく ) ( まわ ) 仮装 ( かそう ) ( )
御相手 ( みあいて ) ( さが ) して 仮面 ( かめん ) ( おろ ) 視野 ( しや ) ( ひら ) くのを ( )
記憶 ( きおく ) から ( こぼ ) ( ) ちていた ( だれ ) かを ( ) ったかを ( さが ) した
時刻 ( ときこく ) 途切 ( とぎ ) れて ( とし ) ( ) ちるように 視界 ( しかい ) ( ひく ) くなる

( いま ) ( ぼく ) 此処 ( ここ ) ( ) てているその ( わけ )
( たし ) かさが ( ) ( すんで ) ( くず ) れないは 何故 ( なぜ ) なのか
( がい ) して ( ひとりもの ) だった  幾何異性 ( きかいせい ) ( ) ないように ( ) かされ
( がい ) して ( もと ) めていたんだ  異星感 ( いせいかん ) なイリヤを ( たび ) して

( いま ) ( ぼく ) 此処 ( ここ ) ( ) てているその ( わけ )
( たし ) かさが ( ) ( すんで ) ( くず ) れないは 何故 ( なぜ ) なのか
( がい ) して ( ひとりもの ) だった  何処迄 ( どこまで ) ( ひと ) りで ( ある ) いた
( がい ) して ( もと ) めていたんだ  破紙 ( はし ) ( ) ( ) わせたような ( わたし )

―*―

  ( いま ) でも ( おも ) ( ) します。 ( ) ( うつ ) ろにありもしない 病院 ( びょういん ) 希望 ( きぼう ) ( たく ) し、 ( ) ( ) どもの ( きみ ) 大人 ( おとな ) 整形 ( せいけい ) された 表情 ( ひょうじょう ) 可哀 ( かわい ) そうで ( ) ていられなかった。できれば ( ) わってやりたかった。


  毎日 ( まいにち ) 昼食 ( ちゅうしょく ) ( ) ( ひと ) ( ) に「 世界 ( せかい ) 貧困 ( ひんこん ) ( ) くす」と ( ) 青臭 ( あおくさ ) 中等学生 ( ちゅうとうがくせい ) みたく 礼賛 ( らいさん ) 写真 ( しゃしん ) 動画 ( どうが ) だけ。 ( かん ) ( ほお ) られ 不法投棄 ( ふほうとうき ) ( うたが ) われるのは ( きみ ) 、みたいな ( ) ( づら ) さ。


  ( わたし ) ( とて ) ( くや ) しかった。 ( きみ ) のことをよくも ( ) らない 傍観者 ( ぼうかんしゃ ) ( すべ ) てを ( ) った ( ) 勝手 ( かって ) ( ) たい ( かたち ) ( きみ ) 装飾 ( そうしょく ) して ( きみ ) ( あそ ) ばれるのが、 本当 ( ほんとう ) ( とて ) ( くや ) しかった。


  ( しん ) じるものが ( ) くなった ( きみ ) ( つい ) に、 ( ひと ) 仲良 ( なかよ ) ( ) ろうとすることを ( あきら ) めた。 全部 ( ぜんぶ ) 一人 ( ひとり ) ( なん ) とかするようになった。 明日 ( あした ) はと ( わたし ) ( おも ) ったその ( ) にはもう、そのまま。


  私達 ( わたしたち ) 一度 ( いちど ) ( ) いから ( ) いてみたかった。「 美味 ( おい ) しそうだなぁ」みたいな、 ( くれ ) ( こぼ ) れる ( なん ) でもないような ( よろこ ) びを、 ( きみ ) ( くち ) から、 ( きみ ) ( そば ) で。

 いつかそんな ( とき ) ( ) るでしょうか。 ( つか ) むことができなかった ( ) ちていく ( ) ( なが ) ( ) わったら、 私達 ( わたしたち ) にはもう ( ) ることしかできません。
  ( ただ ) 、いつかそんな ( ) ( ) ( ) しいと、 私達 ( わたしたち ) ( ねが ) っています。

 ずっと ( ねが ) っています。

*―*

( ちり ) ( ) もった ( むくろ ) ( やま ) ( おか ) 黄昏 ( たそが ) 寝転 ( ねころ ) ぶように
( ぼく ) 其処 ( そこ ) ( ) ( ) いたようで ( さき ) ( ) 夢片 ( ゆめひら ) ( )
( やぶ ) られて ( しま ) った 恋文 ( こいぶみ ) のように ( ) かれてきた 自分 ( じぶん ) 箇所 ( かしょ )
( ひと ) ( ひと ) 断片 ( だんぺん ) ( ゆび ) ( はさ ) んだものを 人形達 ( にんぎょうたち )

( いま ) 此処 ( ここ ) 先立 ( さきだ ) って ( ) れていたのは
( たし ) かなものがあったと ( かん ) じれるは 何故 ( なぜ ) なのか
( がい ) して ( ひとりもの ) だった  幾何異性 ( きかいせい ) ( おな ) じように ( うれ ) いて
( がい ) して ( もと ) めていたんだ  異星感 ( いせいかん ) なイリヤを ( なが ) めて

( いま ) ( ぼく ) 此処 ( ここ ) ( ) てているその ( わけ )
( うれ ) ( なが ) ( ぼく ) ( たす ) ( そこ ) ねた 残骸 ( ざんがい ) だった
( がい ) して ( ひとりもの ) だった  幾何異性 ( きかいせい ) ( おな ) じように ( うれ ) いて
( がい ) して ( もと ) めていたんだ  異星感 ( いせいかん ) なイリヤに ( のこ ) して
そうして ( たば ) ねていたんだ  ( ) れば ( ) ( むね ) でずっと ( ほだ ) して
そうして 此処迄 ( ここまで ) ( ) っていた

―*―

弔辞 ( ちょうじ )

  生前 ( せいぜん ) ( わたし ) ( しあわ ) せになるところを 見届 ( みとど ) けたいと ( ) ってくれた 貴方 ( あなた ) は、 ( わたし ) ( ) ( こぼ ) し、 ( わたし ) ( ) ( まえ ) から ( きゅう ) ( ) なくなったことを、 ( うし ) ろめたく ( おも ) っているかもしれませんが、 貴方 ( あなた ) 苦労 ( くろう ) ( しぼ ) ( ) した ( やさ ) しさに ( ) づくことができなかったほど ( わか ) くて ( おろ ) かな ( わたし ) ( むね ) ( うち ) にあるのは、 ( うしな ) って ( はじ ) めて ( ) づいた、 贖罪 ( しょくざい ) 一杯 ( いっぱい ) ( あふ ) れた 感謝 ( かんしゃ ) 喪失感 ( そうしつかん ) です。


  貴方 ( あなた ) ( こえ ) はもう ( わたし ) には ( とど ) きません。でも、 ( わたし ) 言葉 ( ことば ) はきっと 貴方 ( あなた ) ( とど ) ( はず ) ですから、 ( わたし ) はこれからも ( ここ ) から、 言葉 ( ことば ) ( つむ ) ( つづ ) けましょう。 貴方 ( あなた ) ( わたし ) ( ねが ) って ( ) れたみたいに、 貴方 ( あなた ) がちゃんと 明日 ( あした ) ( むか ) えるようにと、 ( かな ) しまないようにと、 ( うれ ) えないようにと。

 だからどうか、もうこれ 以上 ( いじょう ) ( わたし ) ( こと ) ( くる ) しまず、 ( やす ) らかに ( ねむ ) って ( くだ ) さい。
  ( わたし ) 貴方 ( あなた ) ( わす ) れませんから。

 どうかご 冥福 ( めいふく ) を。